2024年3月22日モスクワにおけるテロへの懸念

2024年3月22日、モスクワでコンサート会場銃乱射事件が発生し、3月25日の時点で137人が死亡するという事件が起きた。このテロを起こしたとしてISが犯行声明を出している。

日経新聞(2024年3月27日朝刊)によるとこの事件を受けてロシアではアジア系のムスリムに対する排斥感情が高まっているという。今回の事件に関連して筆者が懸念しているのはマイノリティーの社会的な分断が加速することである。

 

筆者はマイノリティーが社会から分断されることそれ自体よりも、その分断がさらなる破壊的行為を誘発する可能性を懸念している。そもそも今回テロを起こしたのはISというムスリムのマイノリティーであり、彼らはスンニ派との対立を深めることでアイデンティティを確立している。現状変革を望む少数派がしばしば用いる手として社会を分断し、対立を煽ることが挙げられる。ISに限らず共産主義者も同様の手口を用いており、彼らは理念のためなら暴力も辞さないという恐ろしい性質を共有している。

今回のテロを受けてISが社会的にさらに排斥されるのは当然かもしれない。しかし、前述の通りISはムスリムのなかでもごくわずかな人しか加入していない。その他大勢のムスリムイスラームが主要な宗教でない国や地域で迫害されることがあってはならない。現状変革の手段として公然と暴力を支持する人々は社会を分断し、対立を煽り、憎悪をまき散らす。今回のテロによって、無関係なムスリムがロシアやイスラーム非主流地域で迫害されるようなことが起きれば、ISや暴力的革命を望む人々は暴力行為に味を占める。そして、迫害された無実の人々の心に社会への憎悪が生まれてしまったらそれこそ思う壺であろう。人々を集団として考えるのではなく、個人として見ることを今一度思い出してほしい。